ふうかかじん ほんか
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━ ━主爻
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〈卦辞〉
「家人は、女の貞に利ろし」
〈読み方〉
かじんは じょの ていに よろし。
〈説明の要点〉
下経は、男女あって然る後に人事ありとする建前から、咸恒をもって始まりました。
しばし、そのような序列から外れたような気がしていましたが、ここに家人の卦が現れますと、再び下経の本道に立ち戻ったような感じがします。
家人というのは、その文字通り「家の人」で、いわば家庭です。
公に対する私であり、外に対する内輪です。
内卦の火と外卦の風は、互いに助け合う性質があり、火が燃えると風を起こし、風が吹けば火の勢いは増します。
これは家族の者が互いに力を合わせて、いよいよ家門を大きくしていくという努力に象り、この卦に家人という名が付けられたと言えるでしょう。
また、巽と離は互いに女卦で、しかも長女を上に、中女を下に、二人の女が貞正をもって家を保っている見方をもできます。
あるいは、また、五爻に陽、二爻に陰を配し、家長と主婦と位を正しく家道が治まっている意味も基となっています。
家というのは、そもそも、古代人に当ててみれば、最も大切な火種を絶やさないように守っているところです。それを更に推し進めて考えてみると、外へ出て働いたり戦ったりしている男たちを、火が温かいのと同様、温かな心で迎え、慰めと憩いの巣でなくてはなりません。
また、その火の明るいように、そこに住む者の気持ちを明朗にさせる歓びの場でなくてはなりません。
それには昔の女たちが火種を守ることに専念し、心を外に向けなかったように、女が家を守ることに忠実であるかどうかが、第一番の要件となります。
卦辞は「元」とも「亨」とも言わず、単に「女の貞に利ろし」と、一言にして家道をそろえる要諦を心憎いまでに見破っています。
それとともに女の貞をもって家道をととのえることが、いかに至難であるかをも、反語として受け取らなくてはならないでしょう。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)