ふうらいえき ほんか
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━━━主爻
〈卦辞〉
「益は、往く攸あるに利ろし。大川を渉に利ろし」
〈読み方〉
えきは、いくところ あるによろし。たいせんを わたるに よろし。
〈説明の要点〉
この前の卦である「損」を逆さまにしたのが、この風雷益で、意味もまたアベコベです。
「益」とは「ます」と読むことでも分かりますが、益し加えることで、減らして少なくする損とは、すべて正反対の有様、やりかたであると見て良いでしょう。
また、益も損も同じことなのに、立場の相違によって生まれる見方の区別であるとも言えます。
一方から他を益せば、益した方は損していることになるからです。
益すというと「儲け」と捉えがちですが、ある時は儲けを意味する事もありますが、益の本当の意味は儲けることではありません。
この卦を理解するためには、とても大事なことです。
従って、損も益も、それは偏在しているものを水平にしようとする易の「中」を尚ぶ思想から見るものです。
損が泰の内卦の陽を損して外卦の空しいのを益したのとは逆に、否の内卦の空しいのを益し補ってやるために外卦の陽を移すという動きです。
益は否の卦から来ています。
そのことを色々な事柄に当てはめてみますと、社会的には下々が乏しくて否の困苦をなめている場合に、上から施して民を恵み救うということになりますし、個人の徳性に関して言えば、及ばざるところがあった場合には、他の全うなものを見て習い補うことにあたるでしょう。
農耕に当てれば、肥料や農具や人員の足りないところに、それを給付するようなことが、やはり一つの益なのです。
このように、益と損は離して考えることのできない密接なものなのです。
益と言うのは、ひとつの水平運動のようなものなので、益してやるほうは満ちて裕かであるに違いありません。
それゆえ、動きとして見る時は、一つの水平運動であるけれども、一つの相(すがた)として眺めれば、益は満ちて裕かな様であると言えるでしょう。
損の時のように上行するのではなく、この卦の場合には、上にあるものを下に及ぼすのですから、上に蓄えていたものを下に施し、否の窮塞を打開する意味があります。
また、上の裕かな場合には、それを上の欲しいままにせず、余沢を下に及ぼすという意味もあります。
これを天下に推して言う時は、庶民は上の仁徳に喜んで服し、その仁政が大いに輝いているとなります。
このような時には、進んで事をなしても通じ、あえて大事を決行する危険を冒しても成るのです。
卦辞では、損の時のように咎にも貞にも触れておらず「往く攸あるに利ろし」と言い「大川を渉に利ろし」と断じています。
これは、五爻・二爻の中爻が、共に正を得ているところから、益すという行いが道に適って、しかも慶びをもたらします。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)