<爻辞>
「輿の曳かるるを見る。其の牛は掣られ、その人天られ且つ劓きらる。初め无くして終り有り」
<読み方>
よの ひかるるをみる。そのうしは とどめられ、そのひと かみきられ かつ はなきらる。
はじめ なくして おわりあり。
<爻辞の意味>
「車が牛に曳かれている。その車は引き戻され、牛も阻まれている。髪の毛や鼻を切られる刑が加えられようとする。初めは誤解があったが、最終的には和合できる」
「火沢睽」は「そむき異なる」ことについて説かれた卦です。
そんな中この三爻は、牛に曳かせる車に乗って、ある人のところへ行こうとしています。
しかし車は引き戻されようとしたり、牛を阻むものがあったりして、なかなか進めません。
それを遠くから見ていた相手は、なかなかこちらへ進んでこない車の動きだけを見て、怒ります。
怒って、初めは刑を加えようとしますが、やがて実際の細かな事情が見えてきて怒りを鎮め、和合に至るとされています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
初爻、二爻では応爻との関係だけを見ましたが、この三爻では、応爻だけでなく比爻も見るので、その「睽」の関係が複雑になっています。
この睽の三爻は隣り合う爻(比爻)の二爻と四爻と陰陽で引き合う関係であるために、応爻である上爻と相背き、初めは応和できません。
しかし「初め无くして終り有り」というように、その経緯を「輿」や「牛」や「睽」に形容して表しています。
「輿」は坎の象で、この三爻のことですが、その三爻(輿)が進むのを止めようと引き戻そうとするのが比爻である二爻です。
そして、その輿を引いている牛の前に出るのを拒み制そうとするのが、やはり比爻の四爻です。
そのため応爻の上爻と睽いているのです。
しかし上爻は外卦離の極まるところにあり、火の激しさを表している爻なので、黙ってそれを見ていることは出来ず、怒ってその髪を切り(天)、あるいはその鼻を削ぐ(劓)ような刑を加えようとするのです。
こういった紛議が起こるのも、この爻の位が正しくないからであり、また初めに睽いて後に和を得るのは、結局上爻と相逢うことが出きるからだ、というわけです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)