さんてんたいちく ほんか
━━━主爻
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〈卦辞〉
「大畜は、貞に利ろし。家食せずして吉。大川を渉るに利ろし」
〈読み方〉
たいちくは ていに よろし。かしょくせずして きち。たいせんをわたるに よろし。
〈説明の要点〉
乾下・艮上。小男艮が乾の老父を畜めている象です。
山の下に太陽が這い入っている象、これが大畜の名の出所です。
風天小畜という卦がありますが、その小に対して、こちらは大。
小畜、大畜という対照で見ると分かりやすいです。
畜とは、止める、たくわえる、養うといった意味です。
これを熟語にすると、畜止、貯蓄、養畜などです。
小畜は天の下に雲があって、今にも雨を降らせそうで降らない「密雲雨ふらず」で、しばし止めている象でしたが、大畜のほうはしばしどころではなく、大いに止めてしまう。
これを人の上に推して解すれば、巽は陰で長女、艮は陽で小男。
巽の方は柔順な娘ですが、小男のほうは屈強な若者です。
これが物を止める場合には、その力には差があって結果も違ってきます。
艮の卦徳は「止」で、もともとから止める性質がありますので、強力です。
止めるものが四爻の一陰か、上爻の一陽か、という違いによって、大と言い、小と区別しています。
次は、畜の意味についてですが、小畜のほうでは同じ畜でも止めるという一面を主としています(これは水天需にも少し似ています)しかし大畜のほうは、養うという面を主に解しています。
畜は畜でも、小畜は防止。大畜は養育です。
養育とは、若く充分な力を備えない者は、すぐに社会へ送り出しても荒波を乗り越えて行くことは難しい。
その力、徳、知識など必要なものを与え、蓄えさせて行かなくてはならない。
実らないものは実らせてから送り出す。
その人の持っている正しい性質を導き育てなくてはならない…そのことを「大畜は、貞に利ろし」としています。
「家食せずして吉」とは、大畜はその知識、徳量を畜えて時を待っているのですが、立派に大畜できたなら、内容が充実したならば、内に止まっていないで世に出て働くのが良い。
家食というのは官にも仕えず、家にいて徒食することで、大畜の目的は畜わえることにあるわけではなく、育てたものを天下のために役立てるのが主眼です。
したがって大畜は目的ではなく、ひとつの手段です。
蓄えが完成したなら、それは学問知識であっても、金銭財物であっても出でてもって天下のために役立てなくてはなりません。
家食などしてはならず、大川を渉る大事を行って良く功を奏すべきなのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)