そんいふう ほんか
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━ ━主爻
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〈卦辞〉
「巽は、小しく亨る。往く攸有るに利ろし。大人を見るに利ろし」
〈読み方〉
そんは、すこしく とおる。いく ところ あるに よろし。たいじんを みるに よろし。
〈説明の要点〉
巽というのは、陰の小なるものが卦主です。
しかもそれが上に現れているのでもなく、中位についているのでもなく、下のほうに入り込んでいます。
ですから、自らが主となったり、重きを支えたり、遠きを慮ったりすることはできません。
それゆえ「小しく亨る」なのです。
その「小しく亨る」のも、兌のように下から持ち上げられるのではなく、下の方へ入り込んで行くのですから、自ら努めて行って初めて亨ります。
また、下に入ることが出来たならば、あくまで巽順に、己を立てずに大人に従ったほうが良いというのが「往く攸有るに利ろし。
大人を見るに利ろし」です。
これは卦の性から言ったのですが、象の風から言っても、風は、坤土のように自ら草木を生じさせたりすることはできません。
生じた草木に虫などが発生しないよう、蟲弊を掃新するなどに効果があるだけです。
しかもそれは風が止まらずして行き回る事によって用を果たすわけで、やはり小しく亨り、往く攸あるに利ろしいのです。
しかも強剛をたくましくしたならば、たちまち草木も吹き倒してしまいます。
そこから、己を立てずに従うことが大事なのがわかります。
風が吹きまわる意味をこの卦に見て、それを命令が行きわたることにも喩えられます。
これは一度命令を出したなら、それをきかないのは民の落ち度だなどとは言わず、その命令がくまなく行きわたるよう、丁寧を尽くすこととしています。
すなわち主卦の主爻である五爻を中心として見る時は、爻そのものが剛健中正であるばかりでなく、卦の巽順の徳を見ることが出来るのです。
ですから中正に巽がい、かこいを越えないので、その志が行われます。
そして、初・四爻は二陽の下に従い伏しているので、小しく亨るところがあり、往く攸あるに利ろしく、かつ大人を見るに利ろしいのだと言うのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)