たくちすい ほんか
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━━━主爻
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〈卦辞〉
「萃は亨る。王有廟に仮る。大人を見るに利ろし。亨る。貞に利ろし。大牲を用いて吉。往く攸有るに利ろし」
〈読み方〉
すいは とおる。おう ゆうびょうに いたる。たいじんをみるに よろし。 とおる。ていに よろし。たいせいを もちいて きち。いくところ あるに よろし。
〈説明の要点〉
「萃」は「聚まり(あつまり)」または「集める」という意味です。
坤の地が下にあり、上に兌の水があるのが沢地萃です。
これは、雨が降って地面の上に溜まっている象です。
そして雨というのは、地面に落ちだまま動かないでいるのではなく、低いところ、低いところへ凹みを求めて寄り集まって行きます。
そういった点を見て、この卦に萃と名づけられました。
比は水と土との相浸透する性向を、人が親しむことに見たてましたが、親しめば集まるのは当然のことなので、親しむということを基に集まる動きを見たわけです。
しかし、萃はそれとは反対に「集まる」という卦ですから、集まる動きを基にして、その中に親しみ交わる様子を見ています。
また、比の場合には一陽と親しむことをするかどうか、その遅速だけが問題でしたが、萃においては五爻のみでなく四爻にも陽爻があるため、衆陰である人心が四・五爻の双方に惹かれるため複雑さが加わっています。
萃の集まるというのは、物とか人だけでなく精神もまた、一つのものを中心にして集まることが大切なのです。
「王有廟に仮る」というのは、そのことを現しており、王が祖宗(そそう=代々の君主)の霊廟をお参りされるということです。
「仮る」とは到達するという意味ではなく、心と心が通じ合うという意味で、王がお参りして威霊に感応するのです。
これは精神上のことですが、それを物で言えば、祭りを大きく盛んにすることです。
祖先を祀るのは、国を栄えさせようと祖霊をあつめると共に、民心をあつめる……これが正しい政治の要であって祭政一致ということになります。
こうして王が祖先を尊べば、人心も孚を尊んであつまって来て、そうすれば精神だけでなく物もあつまって来ます。
物があつまるというのは、祭りの供物として生け贄があつまることで、このような祭りにあっては大きな生け贄を用いて良いのです。
祭祀に限らず、すべての事においてそうですが、このように人心も物資もあつまっていれば、積極的に事を遂げられる時運となっています。
ですから「大牲を用いて吉」であるとともに「往く攸有るに利ろし」でもあります。
そこで、その集まる目標ですが、それは言うまでもなく正しいところでなくてはなりません。
先ほど、この卦は五爻と四爻と、集まる目標が二つあると述べましたが、邪な方向や、それぞれの性に合わない方へ集まって行ったのでは良くないので「貞に利ろし」です。
そしてその貞しさを見分け、正しい方へ進むためには「大人を見るに利ろし」となります。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)