ちかめいい ほんか
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━ ━主爻
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〈卦辞〉
「明夷は艱貞に利ろし」
〈読み方〉
めいいは、かんていに よろし。
〈説明の要点〉
この地火明夷は、坤の地の下に、離の日輪が没した象を取ったものです。
一つ前の火地晋は昇り進む卦でしたが、進めば遂には、どこかに障害が生ずるものですので、晋の次にこの明夷が配されました。
しかし、あるいは進んで傷むというより、晋の明と明夷の暗との循環、そして晋の昼と明夷の夜との交換とし、ふたつの卦を綜卦の立場から観察することが相応しいです。
そして晋を進むとするならば、明夷は隠れるです。
「夷」という字は、大と弓を重ね合わせた文字です。
大弓は物を傷つけ破る物なので「明夷」は明るさを破るで、闇と同じです。
明るさが失われたのは、正常ではありません。
正常でない事は、いつかは旧に復さずにはいられません。
それで悩みつつも正しい所を守っていれば、再びその正しいものが正しいものとして通ずる時が来る。
そのことを「明夷は艱貞に利ろし」としています。
前に天山遯という卦がありましたが、これも陰が陽を侵していくという正常さを失った時で、君子は山の中に隠れて災いを避けたほうが良いと言っていました。
しかし、この明夷では「艱貞に利ろし」と教えているのです。
この点は遯と明夷とでは、まったく違います。
なぜなら遯は、邪悪なものが下から起こって来る卦ですから、君子は逃れて災いを避けました。
しかし明夷は、暗の世を作ったのは上にある暗愚な君の故であり、たとえ暗愚であろうと一国の主であるからには権力を持っています。
だから逃げても逃げおおせない。
逃げられないなら、逃げ出したい気配を見破られて、ひどい目にあうより自分自身もまた、明るさが失われている世の中に似合うよう、その明徳を覆い隠し、君子は和して同ぜずで、悩みつつも貞しさを守って行ったほうが良い。
それが、明夷に処する唯一の道なのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)