ちたくりん ほんか
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━━━主爻
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〈卦辞〉
「臨は、元いに亨る貞に利ろし。八月に至りて凶あらん」
〈読み方〉
りんは、おおいに とおる ていに よろし。 はちがつに いたりて きょう あらん。
〈説明の要点〉
坤の地と、兌の沢とでなる地沢臨ですが、これをそのまま自然に当てはめますと、地が沢の淵に臨んでいる象となります。
そして、満々と水のたたえられた淵があれば、誰もが好奇心や警戒など、何らかの興味をもって観察しようとします。
それが臨のあるがままの象で「のぞみ見る」という意のあるところです。
また、この卦を二つに分けて、地の側からと沢の側からと双方の関係を見れば、沢の水が地下に浸み込み、水はまた地中を潤し、そこに生気を与えている……両者が相臨む象とも取れます。
「臨」は「のぞむ」と読みますが、「のぞむ」というのは大体において上から下を臨み見ることです。
また向かい浸む(すすむ)ことも意味していますが、どちらかと言うと、非常に能動的な文字です。
「見る」という1つの行動でも、この卦の次に出てくる「風地観」という卦も「みる」という意味を持ちますが「臨」と「観」では幾分の差があります。
「臨」は身を乗り出してみる意が強いのですが、上から臨み見れば、下からも望み仰ぐのが相互反射の理で、臨は上からだけでなく、下からも仰ぎ見る意を取って取れなくはありません。
この卦は「十二消長卦」といって、初爻の側から一つずつ陽が増してゆく経過の中にあります。
「臨は、元いに亨る」とありますのも、この卦は陽が長じ、陰を消してゆく、陽気のすすみ長ずる卦だからです。
そして正しいところをもって亨るのでなくてはならないということを「貞に利ろし」としています。
「八月に至りて」とありますが、このように具体的な時期を表したのは何かと言えば、八月というのは旧暦ですから今の九月にあたります。
九月と言えば、やがて霜も下りてこようとするような、陰の勢いが増して来る時です。
今、臨の時には陽が長じつつありますが、それが衰えて今度は反対に陰の勢いが増しはじめる時期を言ったに過ぎません。
陽がすすんで陽が極まれば、今度は陰の増す時期となる……これが自然の勢いの推移なのですから、陽が長じつつあるときから、そのことを予見して、ただ勢いのままに進むのを制さなくてはならないという戒めも含め「八月に至りて凶あらん」としたのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)