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〈爻辞〉
「乾肉を噬みて黄金を得。貞しけれども厲うし。咎なし」
〈読み方〉
かんにくを かみて おうごんを う。ただしけれども あやうし。とがなし。
<爻辞の意味>
「固い干し肉を噛んだら金の矢じりがでてきた。正しくても危うさに注意。咎めを受ける過失はない」
「火雷噬嗑」とは「障害を打ち砕いて和合一致させる道」について説かれた卦(か)ですが、それぞれの爻の意味としては「罪人」と「罪人に刑罰を与える役人」として書かれています。
罪人を裁いて(障害打ち砕いて)、平和的にする(和合一致させる道)のが火雷噬嗑の卦ですから、なんら違和感はありませんね。
そんな中この五爻は「相手が巨悪な罪人ゆえに、自ら裁判を行わなくてはならなくなった君主」です。
罪があまりに大きいと、君主みずから、その者に対する裁判を行わなくてはならないのです。
この君主は、柔順で道徳的な君主です。
その正しい性質が功を奏し、苦心の末に罪人に白状させるに至ります。
君主の処置は的を得ているのですが、その上になお「本当に正しい道にかなっているか」と自ら危ぶみ恐れるので、咎められるような過失は犯さないと言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
五爻は陽位に陰でおり位が当たらないが「獄を用いるに利ろし」
とあった主卦の主爻です。
離電の明弁をもって獄をさだめるので、過誤を侵すことなく、よろしきを得ます。
それを「乾肉を噬みて黄金を得」と言っています。
乾肉は乾胏や腊肉より、ずっと噛みやすいことを表し、刑してよろしきを得て、罰を明らかにし法を正すのを黄金に例えたわけです。
噬嗑は初爻よりも二爻、三爻……というように上位に進むほど罪が重く、刑も難しくなってきますが、君位に離明をもって在るものが獄え(うったえ)を裁くのですから、服さない者はいません。
しかし罪ある者を罰するのは貞しいことであるとはいえ、君たるものが直接裁かなくてはならない獄があるというのは一面の危険を蔵している。
それが「貞しけれども厲うし」です。
そして「咎なし」を得るというのは、その離明、その君位の権力において当を得ているという事なのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)