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<爻辞>
「鳥其の巣を焚く。旅人先には笑い、後には咷き號ぶ。牛を易に喪う。凶」
<読み方>
とり そのすを やく。たびびと さきには わらい、のちには なきさけぶ。うしを さかいに うしなう。きょう。
<爻辞の意味>
「鳥の巣が焼けた。旅人は初め笑い楽しんでいたが、後には泣き叫ぶ。牛を境で失う。凶」
「火山旅」とは「旅をすること」について説かれた卦(か)です。
これは現代の「楽しい旅行」の類ではなく、昔の人が住居を失うなどによりやむを得ず流浪するような旅のことです。
安全は保障されず、寂しく、不便極まりない旅です。
そんな中この上爻では「鳥の巣が焼けてしまった」と言っています。
それはこの旅人が驕り高ぶった位置に上っていることを、高いところに作られる鳥の巣に喩えています。
その鳥の巣が焼けてしまったのですから、この旅人がすべてを失ってしまったことを表しています。
この旅人は、旅の初めは楽しく笑っていましたが、後には泣き叫ぶことになったのです。
また、全財産を載せた車を引かせていた牛が、境(家の垣根)という、すぐ近くでいなくなってしまったのですから、それは召使いの仕業です。
同時に牛は「柔順さの象徴」ですから、この者から「柔順の徳」が失われていることも表しています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
上爻は、旅の時に嫌う陽爻であるばかりでなく、離の極にあり、火の激しさの現れるところで、鳥がその巣を焚かれるように宿舎を喪って、初めには笑っていたものが泣き叫ぶことになります。
柔順謙譲を尊ぶべきときに、自らを高しと驕ったからで、それは焚かれるような災いを招くだけの理由が自分にあるのです。
そして「其の次」と言うべきところを「鳥其の巣」に喩えたのは、三爻は艮で家としますが、こちらは離で鳥とし、巣とし、焚くとするからです。
それとともに、一層のみじめさが加わっていることも察するべきでしょう。
そして、こういう事になるのは、旅の時に大切な柔順謙譲を喪ったための凶なのです。
それを「牛を易に喪う。凶」としています。
牛は柔順なことに喩え、易(さかい)は卦の終わるところにあるのを見ているのですが、いかに柔順であるべきことを教えられても終にそれを聞くことなく、自らも覚らなかったということです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)