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<爻辞>
「或いは之を益す。十朋の龜も違う克わず。元吉」
<読み方>
あるいは これを えきす。じゅっぽうの きも たがう あたわず。げんきつ。
<爻辞の意味>
「皆がこの者を益する。大きな亀も違うことなく大吉」
「山沢損」とは「物が減って少なくなること」について説かれた卦(か)です。
そんな中この五爻では「周りの皆が自分の損も顧みず、五爻に与えてくれる」と言っています。
五爻は受け取る側なので大吉であり、そのことは高価な亀(亀は占いに使わていました)で占っても間違いがないと言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
この爻も四爻と同じように、その陰の乏しいところを陽の満ちたもので益し補われる側の爻なので「之を益す」と言っています。
四爻のように、損の建前からこの爻を見ないのは、陰をもって君位に居る場合は、謙をもって下に聴く明君と解するのが通例で、損すべきものがもはや無いからです。
「或いは」とあるのは、応位の二爻に「損せず」とあって、下より上を益すことをせず、この爻は比爻の上爻から益したものを受け取るので、しっかりと定まっていない爻象から言ったものでしょう。
その意味は、期待せずしてもたらされることであり「上より祐く」と言うのも上爻を指しつつ、しかし、天からでも与えられるかのように、思いがけなく助けられることなのです。
それは久しきに恒る上の仁徳に対し、それを必要とする場合が起これば、物でも人でも、ひとりでにもたらされるのであって、あえて秘かに期待して望んでいるわけではないという言外の深意を汲まなくてはなりません。
そのようであったなら、真に最大最善の政治と言うべく、十朋の龜で占うとも違うことのないような、元いなる吉であると言うのです。
「十朋の龜」の十朋とは、価格のことです。
古代では貝を貨幣としていましたが、その時代にあって十朋と言えば最高金額でした。
ですから、この上ない立派な亀(元亀)と言うべきでしょう。
この卦は、離の似卦で、外硬内軟であるのを亀としています。
この亀の甲を用いて卜をしたので、亀卜と言うのですが、亀そのもの吉凶を予知する霊物されていました。
「或いは之を益す」の「或いは」に疑うところがあって、これを卜してみたとしても、安物の亀なら間違えて凶と断ずることがあるかもしれないが、元亀のような霊物を用いても必ず元吉と出るほど、占うまでもない吉であると言うわけです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)