さんちはく上

独学者のための易経解説
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山地剥 上爻

さんちはく じょうこう
まずは、やさしい解説から

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〈爻辞〉  
「碩果食われず。君子は輿を得。小人は盧を剥す」

〈読み方〉 
せっか くらわれず。くんしは よをう。 しょうじんは ろをはくす。

<爻辞の意味>
「高い木に生っている大きな果実が食べられてしまうことはない。君子は人々に尊敬され大きな車に載せられる。邪悪な者は自分の住むところさえ失うことになる」

「山地剥」の卦(か)は「剥ぎ落とすこと」について説かれた卦で、君子を大勢の邪悪な者たちが剥ぎ落とそうとしています。

しかし、いかに邪悪な者たちで溢れた世の中であったとしても、君子(道徳に優れた賢人)が全くいなくなってしまうということはあり得ません。

そのことを「高い木に生っている大きな果実が食べられてしまうことはない」と喩えています。

その果実が、もし邪悪な人間に剥ぎ落とされたとしても、種が地に残り、また生じてきます。

邪悪な人間は君子を剥ぎ落とそうとするものですが、そうして世がますます乱れれば、彼らはやはり、何とかしてほしいと君子を求めます。

ですので「君子は人々に尊敬され大きな車に載せられる」ことになるのです。

しかし、それでもなお君子を貶めることだけに執着する者がいるならば、その者は自分の居場所さえも失ってしまうと言っています。



「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。

また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。





加藤大岳述 山地剥 上爻

<説明の要点>

この上爻は、この卦で唯一の陽爻です。

物に当てはめてみると、木の頂上にポツリと残った大きな果実で、これは人や鳥獣が、いかにしてもと狙ったにもかかわらず、どうしても取ることができません。

あまりに大きく、あまりに高く、あまりにも固いので(外卦艮より)、人にすれば世の中に溶け込まない、剥のような良からぬ世界にあっても、超然と高山に隠居している君子ですから、これを追剥(ついはく)することなど、とてもできない。

「碩果食われず」とは、そういった意味です。

いかに世が乱れ、多くの善良な者が亡されて行ったにせよ、正義の種は亡び去ってしまうことなく、いつかはまた勢いを得てくるのが天道の理です。

その時には、今まで正しい認識は持ちながらも時の勢いに抗し得ず、涙ながらに邪悪な世に従っていた三爻のような庶民が喜び迎えて我世の春を楽しむでありましょう。

それが「君子は輿を得」です。

上爻に残っていた君子の果実が、失われず再び正しい世を盛り返してきますと、今度は一変して小人は消え去らねばならなくなります。

「小人は盧を剥す」は、小人が居場所を失うことを言っています。

正義が栄える世となれば、世論も生気を吹き返し、小人を追放することとなるのです。

加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)



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