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<爻辞>
「平にして陂かざる无く、往きて復らざる无し。艱貞なれば咎无し。恤うる勿れ、其れ孚ならば食に于て福あり」
<読み方>
たいらにして かたむかざる なく、いきて かえらざるなし。かんていなれば とがなし。うれうるなかれ、それ まことならば しょくにおいて ふくあり。
<爻辞の意味>
「平らなものは、やがて傾く。向こうへ行った人は、必ずこちらへ戻ってくる。正しい道を固く守っていれば、咎めを受けるような過失はない。むやみに心配しなくて良い。まことの心をいっぱいにしていれば幸福を受けることになる」
「地天泰(ちてんたい)」の卦(か)は、天下泰平について説いた卦です。
そんな中この三爻は、天下泰平も頂点に達しようというところです。
このような時には油断が生じるもの…。
それを戒めているのです。
平らなものは皆、やがて傾くように、泰平の世も必ず乱れが生じてきます。
そのような気運とは逆らえるものではないので、日々、正しい道を固く守っていくのが良いのです。
そうすれば咎められるべき過失は免れることができます。
そのように正しさを保っているならば、逆に心配し過ぎることもありません。
誠実さを胸にいっぱいにして対処していくならば、たとえ衰退の気運にあったとしても幸福を得られるでしょう、と言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
「陂く」とは、傾くです。
この三爻は位置から言って、泰から少々「否」に傾きかけたところで、「栄枯は移る」の世の習いを如実に示した爻です。
平らなものはすべて傾くのが常道ですし、往ったものはいつか帰ってくるのが当然です。
昔から「日中すれば傾く」とか「月盈つれば虧く(つきみつればかく)」と言うように、昼夜にしても四季にしても、また人間界においてもそういうことは常に見られることで、否応なしに巡り来るのです。
「平にして陂かざる无く」は泰平が否塞になることを、「往きて復らざる无し」は、泰が「小往き大来たる」であるように、全てはまた「小復り大往く」の否になるのを言ったものです。
天の時はこのように巡ってくることは解っているのだから、心を砕き力を致し、正しいところを固く守っていかなくてはならない。
これが艱貞で、そのようにすれば咎がないのです。
このように否運に向かいつつあるときに、苦しみの中で貞を守って
いたなら否運の中でも福を見出すことができる。その事を言ったのが、「食に于て福あり」です。
「食」というのは、日蝕とか月蝕とかの「蝕」のことです。
だから「欠けた中にも」「衰えの中にも」といった意味となります。
三爻を変ずると兌(欠ける)となり、円満なものが欠けた形となります。
「月盈つれば虧く」ということは、すべてに当てはまることであり、天地の理であると言っています。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)