山地剥(さんちはく)本卦

独学者のための易経解説
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山地剥 本卦

さんちはく ほんか



山地剥 本卦の解説

━━━主爻
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〈卦辞〉  
「剥は、往く攸有るに利ろしからず」

〈読み方〉 
はくは、いくところ あるに よろしからず。



〈説明の要点〉

山地剥は、坤下・艮上で構成されています。

坤は地、艮は山です。

どちらも土に属していて、その質は同じですが「ありかた」が違っています。

地は平らで、山は高い。

この卦は、平地の上に山が屹立している象です。

初爻から五爻までは、土の層。

上爻の一陽が、山頂です。

そして空とを区切るいただきの一線は、永久不変の姿かと言えばそうではなく、雨風の作用を受けて目には見えないほど少しずつではあっても、山肌が段々と剥ぎおとされているのです。

高いものは低い方へ、低いものは高い方へ……そうやって水平を保とうとするのが天地自然の一つの理だからです。

このような象から、山地剥と名づけられました。

山地剥は、人にすれば老衰の境にある象ですし、日にすれば夕暮れです。
四季にすれば秋から冬へ移行する時に当たります。

剥は「追剥」などという言葉がありますように、追い迫って、むしり取ることです。

削り取るとか、うばうとかいった語と通じており、相手などかまわず、強引に取り去ることで甚だ良からぬ言葉です。

この卦は陰の勢いが強く、陽を剥ぎ尽くしていくのですから、善悪や大小から言えば、陰悪なもの、小なるものが、陽善の大なるものの力を消してゆく…。

「悪盛なれば天に勝つ」という言葉がありますが、その標本みたいな卦で、君子を主にして見れば追い剥がされることになりますから、時に利のないのを知って後退し、気運の転換を待たなくてはなりません。

このように、ひとつとして良い意味はありませんが、しかし化けの皮を剥ぐなどと言った場合には、小気味良いことです。

そのような剥ぎ方ならば、少しでも多く、少しでもしてしまって、新しい実質だけの交際になるほうが良いでしょう。

山地剥の一陽を君子と見れば、五陰を小人と見ます。

邪な小人が君子に迫って、その力を剥いで行く時なので、こういう時には外に向かって進むことや、事を起こすのは良くないわけです。

易は君子のために進退出処を教えているのであって、小人のために説いたものではありません。

ですから山地剥の卦においても、このような小人増長の時には「往く攸有るに利ろしからず」と説いています。

もし小人にも共通の教えであったなら「剥し得る時なり、往くこと大いに利ろし」とでもなるのでしょうが、そうは説かれていません。

夕暮れや冬などといった時には、人力をもって衰勢を挽回することはできないので、拮抗しても徒に傷害を被るに過ぎません。

為すことなくして、災いと失敗を避けなくてはならない時なのです。

加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)



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