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<爻辞>
「茅を抜くに茹たり。其の彙を以てす。貞吉にして亨る」
<読み方>
ちがやを ぬくに じょたり。その たぐいを もってす。ていきちにして とおる。
<爻辞の意味>
「茅(ちがや)」という草を一本引き抜くと、何本も連なって抜けてくる。志を改めるなら吉にして幸いを得られる」
この茅(ちがや)という草については、一つ前の卦(か)地天泰でも出てきましたね。
同じく初爻のところに出てきたわけですが、意味はその時と同じです。
茅(ちがや)は地中で根が連なっているため、一本抜くと他の茅も一緒に抜けてくるというのです。
それについては、地天泰の初爻の時は「地位の低い賢人が一人登用されると、似たような立場の人も一緒に登用されたりするものだ」とされていました。
しかし、この「天地否」という卦は「ふさがって通じない」という卦ですから、おのずと意味が逆になってきます。
地天泰の初爻が賢人だったのに対し、天地否の初爻は「志の良くない人」です。
したがって「志の良くない人」が一人登用されると、他の似たような人も登用されることになる、と言っているのです。
しかしこの初爻が極悪人かと言えば、そうではありません。
これは「ふさがって通じない」という、よろしくない卦ではありますが、初爻ですからまだ入り口です。
ですので「志が良くない」と言っても、まだ浅く、それほど悪いわけではなく「もし志を入れかえるのなら吉となり福を得られる」と戒めているのです。
これは漢文学者の公田連太郎先生の解釈に基づいています。
加藤大岳先生は、この初爻を地天泰と同様「賢人」としています。
ぜひ下記の加藤先生の要約も比較してご覧ください。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
泰の初爻には「征けば吉」とありましたが、否の方では「貞吉にして亨る」となっています。
「抜くに茹たり」とは、泰の初爻でも出てきましたが、茅という草は一本一本生えているのではなく、根は相当大きな株になっています。
抜こうとすると一緒に抜けてくる。
それが「茹たり」「其の彙を以てす」です。
「彙」というのは、二爻・三爻が共に陰でそろっているからです。
「貞吉にして亨る」というのは、爻辞は君子の側から解したもので、君子にとって初爻の時なのですから、否中の否の始めに当たります。
この爻は陽位に陰でいます。
否の時にあって、正しい道が行われるの泰を招こうと努力するより、泰の時が自然に巡ってくるのを同志の者とそろって待つ方が良いと言うのです。
貞吉は、積極的に物事を解決しようと努力するのではなく、貞しい道をひそかに守って吉を得るのです。
この否のような時には、そのようにしてこそ回天の機をつかむことができるのです。
今、みだりに動けば、危難にあうことは言うまでもない。
初爻は世にまだ顕れて用いられていない……草むらの中の君子なのです。
あるいは、初爻は否運を巡らせて泰を来たそうとする君子の努めの初めの時と見るべきでしょう。
否の時には上に立つ者も難儀しているので、この初爻も、それを思って徳を慎ましくし身を守れば亨るわけです。
初爻およびその類の賢人たちが身を守って相戒め、泰の時が戻ってくることを念じるのは、苦難に退かされている君をお助けしようとする志があるからに違いありません。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)