〈爻辞〉
「左腹に入れて、明夷の心を獲。于きて門庭を出づ」
〈読み方〉
さふくに いれて、めいいの こころを う。 ゆきてもんていを いづ。
<爻辞の意味>
「悪の左の腹に入ったので、悪の心持ちを知ることとなった。門を出て去る」
「地火明夷(ちかめいい)」の卦(か)は、「明らかなる者が傷つけられる時代」について説かれた卦です。
そんな中この四爻は、悪の懐(内部)に入る立場となったため、悪の実態や考え等々、知るところとなります。
そして大人しい四爻は、これはどうすることもできないと思い、その場を去るのです。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
まず四爻では「左腹に入れて」と言っております。
これは二爻で左股と言ったのに対し、その爻位が腹となりました。
しかも陰爻…、暗昧をなす坤中の一陰であり、さらにその頭でもない。
つまりは、腹心の部下とでも言いましょうか。
そういったこの爻の立場を、わずか「左腹」の二文字にて実に巧みに表現しているのです。
では、この四爻は、左腹に入ってどうするのかと言えば、頭と共謀するのではなく、むしろその中心を知り尽くす事によって、その不正の仲間となることを欲しません。
また傷害が、やがては己の身にも及ぶであろうと察し、逃れて遠ざかるのです。
いわば、外卦における初爻であります。
ただし四爻は、初や二爻と立場が違って、内側にいる者なので、同じく逃れ去るにしても「門庭を出づ」と言っています。
内卦離を宮室とし、四爻変の震をもって出て行くとするからです。
陰位に陰でいるので柔正の徳があり、しかも彼をいさめたり討ったりするような勇武を持たないからだと言えるでしょう。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)