〈爻辞〉
「負い且つ乗る。冦の至るを致す。貞吝」
〈読み方〉
おい かつ のる。あだの いたるを いたす。ていりん。
<爻辞の意味>
「荷物を背負いながら、馬車に乗る。危害を加えられることをする。正しくても恥ずべきことだ」
「雷水解」の卦(か)は、「困難が解け散る」ことについて説かれた卦です。
そんな中この三爻は、世に困難を生み出すような邪悪な者です。
荷物を背負うべき卑しい位の者が、荷物を背負ったまま、高貴な者が乗るべき馬車に乗っています。
このような分不相応な行為は、周囲から危害を加えられてもしかたありません。
たとえそれが、正当な手続きをとって馬車に乗る地位を得たのだとしても、恥ずべき行為だと言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
「負う」というのは、荷物などを背負うことで、賤しい業を指します。
「乗る」というのは、輿などに乗ることで、貴い位を示しています。
これは三爻が四爻の陽を上に背負い、また二爻の陽の上に乗っているのを賤夫の身でありながら貴紳の位についていることに喩えたのです。
なぜ、そのように比爻の関係を見立てたのかと言えば、三爻は解の時に除かるべき小人です。
そればかりでなく、内卦の極まるところに位しているのを、奸侫(かんねい)にして高位についたものと見たからです。
徳がないのに、その位にいるのですから、たとえ当人は正しい順序をふんで上位についたのだとしても、吝窮を免れませんし、あくまでもそこに止まろうとするならば、後に悔いることも及ばないような凶禍を招くというのが「貞吝」です。
そのように天下の難みの因を成した者を憎んで、危害が及んでくるのは避けることができない勢いです。
しかし冦が加えられたとしても、それは自分が招いた咎で誰を怨むことはできないのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)