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<爻辞>
「母の蠱を幹す。貞にすべからず」
<読み方>
ははの こを かんす。ていに すべからず。
<爻辞の意味>
「母が作り出した乱れを、その子供が正す。あまり厳しすぎないようにすべきだ」
「山風蠱」の卦(か)は「腐敗を正す道」について説かれた卦です。
そんな中この二爻では、母が作り出した腐敗や乱れを、強く有能な子供が正しく改めると言っています。
しかし、この母は才能とぼしく弱い母親であるため、いくら子供が正しく改めると言っても、あまり厳しくやりすぎては上手くいきません。
またこの母親は、初爻の「父(先代)」とは違い生きているので、その分、配慮も必要です。
それらのことから、母親の気持ちや立場もうかがいながら、緩やかに刷新すべきだと言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
二爻にも「蠱を幹す」とありますが、これは父のではなく母のです。
二爻は陰位で、母・妻・臣の位ですから、そこに当てはめられました。
また、応位である五爻が陰であるところから、父なき後を母が主人となって切りまわしているとも見られます。
未亡人の母が切りまわしているが女だけに、色々蠱敗を作る。すべてが因循で、古い形に従うだけで、蠱をひた隠ししていくので子は、その蠱を幹して(ただして)行かなくてはならない。
しかし陰位に陽でいるので、非常な頑固さをもって行うきらいがある。母の過ちを是正するのに、面を固くして意見したりするような傾向です。その蠱を責めるのに急、かつ頑固さをもってしてはならない。それが「貞にすべからず」です。幸い中を得ているので偏らないよう努めるべきなのです。
この爻は、相手が母であるだけに、対処が難しいところがあります。
陰の性質というのは、変化のない泰平に泥み、それを良しとし、何か積極的な事をしようなどということを憎むので、母の蠱、一般に陰の蠱というものは蠱弊があっても何とかして隠そうとし、現れた時には手のつけられないほど大きく深くなっているものが多いので、これをただしていくのは一番難しい。
そもそも蠱を正すこと自体が難しいのですが、これはとりわけ難しいのです。
これは死んだ父のことでなく、生きている母のことですから、強くただそうとすれば母を非難することとなり親子の愛を損なうこととなりますし、かと言って見て見ぬふりで放っておけば、他人から非難され、親子とも人倫の道から外れることとなります。
だから、いずれにしても難しいのですが、この二爻は陰の位に陽でいるので、剛健の実力を持ちながらも、その剛健さで一気呵成にやっつけることをしない……だから破れを修復することができ、愛に傷つき、義に傷つけられるようなことは免れると言うわけです。
緩急よろしきを得、内外歩を合わせ、徐々に蠱をただしていくべき時に当たっているわけです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)