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<爻辞>
「震往來すること厲うし。億いに有事を喪うことなし」
<読み方>
しん おうらいすること あやうし。おおいに ゆうじをうしなう ことなし。
<爻辞の意味>
「また雷がきて危ない。慮って、なすべきことを仕損じることはない」
「震為雷」とは「勢いよく動く」ということについて、雷に喩えて説かれた卦(か)です。
雷が激しく鳴る( = 恐れ驚くような事が起こる)とき、どのように対処すればよいかを各爻、それぞれのケースで示しています。
そんな中この五爻では、雷が過ぎ去ったと思ったら、また次の雷が来てとても危ない状況にあります。
しかし、自らのなすべきことのため、逃げ出すことなくそこに留まり、役目を果たすと言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
往來というのは、内卦の震が来て去ったかと思うと、また外卦の震が来る…、ひとつの事では済まずに行ったり来たりする…、しかもそれが「遠きを驚かし、ちかきを懼れしむ」という震の往来なのですから厲ういわけです。
その往来する震の上に乗っている事では、二爻に似ています。
しかし四爻に乗っているこの爻は、二爻のように「貝を喪う」かと言えばそうではなく「有事を喪うことなし」なのです。
なぜ喪わないのか…?
二爻も五爻もともに中を得ているわけですが、五爻ののほうは「泥に逐つ」という弱い震の上にあるばかりでなく、主卦の主爻です。すなわち君位についている爻だからです。
この有事という言葉についても、色々な説がありますが、まず「為すこと」「為すべきこと」と見れば無難でしょう。その有事を放棄したりせず、保っていると見ます。
震の往来は、危険な行い、安んじ得ない行いであると言っています。
具体的には、震の非常に騒がしい事が一度ならず何度も来る…。
世態とすれば、騒がしい世の中で経済が安定せず政情もまた不安といった状態を表します。
そうした時に政治を行う者は、安心していられず、その地位も危ういわけですが、しかしその為さねばならないことを、その変動期にあっても投げ出さず持ち耐えて行く…。
それは外卦の中を得ているのように、柔順の爻であるから、その変動や奮動するものに対して争ったり強く拒んだりせず、巧みに処しつつ自分の為すべきことを守り通すのです。
二爻は、財産などを捨てて、生命あっての物種と九陵に逃げ、命だけはまっとうしたのですが、この爻は自分の仕事を投げ出さずにやるのです。
危ない所を柔徳によって切り抜けて行くのです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)