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<爻辞>
「貞なれば吉。悔い亡ぶ。利ろしからざるなし。初めなくして終わり有り。
庚に先だつ三日。庚に後れること三日。吉」
<読み方>
ていなれば きち。くい ほろぶ。よろしからざるなし。はじめなくして おわりあり。
こうに さきだつ さんじつ。こうにおくれること さんじつ。きち。
<爻辞の意味>
「正しい道を固く守っているので吉。悔いることはなくなってしまう。大変よろしい。
最初は思うように行かないが、最終的には上手くいく。
物事を変更するときは初め丁寧に、そして充分図って行う。吉」
「巽為風」とは「柔順に従うこと」について説かれた卦(か)です。
従うことができないのは論外ですが、逆に従い過ぎるのも良くありません。
バランスよく、正しさをもって従うべきものに従うのが良いのです。
そんな中この五爻は、君主の位ですから命令に「従わせる側」の立場です。
命令に広い範囲で従わせるためには、それなりに時間がかかるものです。
そのことを「最初は思うように行かないが、最終的には上手くいく」と言っています。
また法律などの変更をするときには、初め丁寧に見極め、そして充分に先を予測するなどして実行するなら吉だと言っています。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
五爻は命令が発せられるところです。
しかしその命令が、すぐにはあまねく行われにくいという悔いが生じるところです。
それはちょうど、二爻と不応になっているようなものです。
ですが、この五爻が中正であることのように、その命は正しく事に中しているので、初めは行われにくくとも、次第に巽い服するようになります。
そのように悔いをなくして、利ろしからざるなしの結果をもたらすというのが「貞なれば吉。悔い亡ぶ。利ろしからざるなし。初めなくして終わり有り」です。
このように命令を発して、ことごとくそれに巽がわせるには、重巽命を申す丁寧さと、慎密な計画(揆度)とがあって、初めて吉を得るのだとしています。
そうして、申命の卦の主爻であるこの五爻において「命を発する道」を示したのが「庚に先だつ三日。庚に後れること三日。吉」です。
この爻変は山風蠱ですが、蠱の渋滞と壊乱をあらかじめ防いで、人新を常に新たにすることが、命令を発する一眼目であり、
それはあたかも風が吹き行くことによって清爽の気をもたらし、作物の蠱害を除いて盛んにするようなもので、それが「庚」です。
「庚」はさらに通じて物事を更新するのですが、その庚に先んずること三つ目の十干は丁です。
丁とは、丁寧さを示します。
後れること三つ目は癸で、癸は揆度(きたく)を表したものです。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)