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<爻辞>
「城隍に復る。師を用うる勿れ。邑より命を告ぐ。貞なるも吝」
<読み方>
しろ からほりに かえる。しを もちうるなかれ。ゆうより めいを つぐ。ていなるも りん。
<爻辞の意味>
「城が崩れる。武力をもって争っても無理だ。君子の命令も上手く伝わらない。正しい命令であっても伝わらなければ恥ずべきことだ」
「地天泰(ちてんたい)」の卦(か)は、天下泰平について説いた卦ですが、この上爻は、その終わりの位置…天下泰平の終わりあたります。
一度、城が崩れるところまできてしまったら、もはや武力で何とかしようとしても無理なことです。
君子の命令も、狭い範囲にしか及びません。
このような事態になるまで、放っておいたことが間違いだったのです。
天下泰平を維持するためには、もっと早くに対処しなくてはならなかったのです。
「占った事柄」と「上記の説明」を、スライドガラスを2枚重ね合わせるようにして解釈してみて下さい。
また、下記の
「加藤大岳述 易学大講座」の要約も、ぜひ併せてお読みになり理解を深めましょう。
<説明の要点>
「城隍に復る」というのは、高々と築かれていたものが一朝にして低いものになってしまったということを言っています。
隍というのは、大体「空堀」と同じですが、「空堀」のほうはまだ少しは水が残っているが、「隍」のほうはすでに土が盛られて平地にちかくなっているようなところです。城と言っても日本の城閣ではなく城壁なので、それが崩れて堀を埋めてしまったのです。
「師を用うる勿れ」とは、時流の変改という、人力では支えきれない大きな勢いで城が隍になるという時ですから、兵を出してもどうにもならない現実を正視しているのです。
「邑より命を告ぐ」の邑とは、村々のこと。
泰の時が極り尽きて乱世となり、城は崩れ兵は萎え、君の威命がまったく行われなくなるので、他の強豪から色々な命令が発せられるというわけです。
こうなってはもう、どうしようもありません。
時運が既に否であるので、窮通の道を探すしかありません。
いくら正しいと言っても、旧をかたく守ろうとしたところで、守り通せるものではなく、吝の道です。
なお、この爻辞を考察しますと、乾(礎石)の上に坤(土)を積み泰の卦そのものに城壁の象があります。
そして泰が極って否に変ずると、土壁は礎石の下に崩れ落ち「城隍に復る」こととなります。
また、この爻を基にして、四~上爻(坤)で、三~五爻(震)で、地雷復となり、めぐり復る意味があり、高く築かれたものが低い所に元通りになるのです。
師や邑などは、これを基礎として直ちに出現するであろう現実の状態です。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)