水天需(すいてんじゅ)本卦

独学者のための易経解説
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水天需 本卦

すいてんじゅ ほんか

水天需 本卦の解説

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━━━主爻
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<卦辞>
需は孚あり。光いに亨る。貞吉。大川を渉るに利ろし。
<読み方>
じゅは まことあり。おおいに とおる。ていきつ。たいせんを わたるに よろし。



<説明の要点>

「需」は「まつ」という意味です。

「まつ」という意味の字は、この他にも「待つ」など幾つかありますが、「需」と「待」では同じ「まつ」であっても、心理的・気構えなどの
点で大きく異なります。

「需」は、積極的なものを持った場合であり、「待」は消極的な、期して待つという意味です。

「需」のほうは求めつつ控えているわけですから、内に逞しい意欲を持っていて、時が来れば直ちに立ち向かおうとする力を見ることができます。

そして、「需」は時間的な意味を主とし、「待」は相対的な関係を主にしているとも言えます。

「需」という字は、冠は雲の略字で雨、下の而というのは天の象形です。

ですから内卦が乾、外卦が坎のこの卦をそのままに表した字です。
天の上に雲が上っている形なのです。

雲が天の上にあるので、水の本来の働きである潤養という務めができない。

それで雨が降るのを「まつ」わけで、潤いを「もとめる」ということになります。

内卦の乾は、その性は「剛健」ですから、進むことを専らとします。

ところが外卦の坎は、「陥険」なので、進むことを阻むことになります。

剛健な者が勇進しようとするのを、坎が阻んでいる……これは、二つ前に出てきた「水雷屯」と同じです。

そして屯は内卦が奮動の性ある震であるために進もうとして進めない悩みと見ましたが、需の内卦の乾は同じ進むにしても、これは円満具足の卦なので、危うきを見れば控え止まる余裕や徳量を
持っています。
悩まず焦らずに時を需ち、陥険に対して時宜の処置を取る。

言ってみれば、屯は困難を前にした青年の苦しみであり、需は老練家の待機姿勢です。

この卦が、なぜ山水蒙のすぐ後に配置されているかと言えば、需の卦は物を養育するのに最も大事な「飲食の道」を説いたものだと言っているからです。
陰陽交わって難みの中に生れ出た童蒙が、求め待つのは言うまでもなく飲食による養いです。

需のときは、需つべきである。

需つべき時に、かたく守って需てば、やがて坎の難みが解けて、大いに亨り得るものである。
この時期に処するには、何より孚の心が大切である。

この「光いに亨る」というのも、この卦においては直ちに通達するのではなくて、この坎険の解けるのを需って、後に亨るのです。

時が来るのを動かず固く守っていることが条件となります。

「吉」というのは、大事をなして、よく遂げることのできる勢いを持った吉です。

乾の剛健で、坎険のなくなった川を渡っていくように、容易に大事が成就するのです。

それを「大川を渉るに利ろし」としています。

加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)



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