山火賁(さんかひ)本卦

独学者のための易経解説
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山火賁 本卦

さんかひ ほんか



山火賁 本卦の解説

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〈卦辞〉  
「賁は亨る。小しく往く攸あるに利ろし」

〈読み方〉 
ひは とおる。すこしく ゆくところあるに よろし。



〈説明の要点〉

この山火賁は、ひとつ前の噬嗑を逆にしたもので、離下・艮上でもって構成されています。

この「賁」は飾ると読み、文飾の意を見ています。

頤中に物あるという見方からすれば、この卦も内部の一陽が四爻と三爻に位置を変えただけですので、そのような見方もできます。

しかし口の働きは、下顎だけが動いて物を噛むわけですから、内卦に震をもつ噬嗑にその意を見ても、この卦はまったく別の観点から名づけられました。

外卦艮は屹立した山です。

内卦離は美しく燃え輝く火です。

山の麓で火が盛んに燃えているとすると、その光は四方の諸物に照り映え、美しい彩りをなすであろうことは言うまでもありません。

火そのものが、すでに燃え輝く明るいものですが、その光を照り映えらせる物があって、その美しさが一層はっきりしたのです。

そういう物に離き添って、本来の値うちを高めるのが賁……そういう内外卦の見方です。

では「かざる」ということは、具体的にどんなことかと言えば、ある生地に粧い(よそおい)を施すことです。

例えば、人で言えば一つの行い。物で言えば、一つの器物……そういったものを観察・批判したり、愛玩賞味したりします。

その際、実質や実態を生地のままムキ出しにして良い場合もあれば、ほど良く体裁をつくろったほうが良い場合も少なくありません。

それは例えば、同じ味の食べ物であっても、汚い器に盛ったより、綺麗な器で食べたほうが美味しく感じられるのが人間の性向ですから、「賁る」ということも又必要なわけです。

体裁をととのえ、潤いを添えておくことは、人間が真実を愛するとともに、美をも欲する限り怠ってはならないことなのです。

ですから「賁は亨る」とまず示されています。

ただ、ここで間違えてはいけないのが、賁というと表面を飾って内容を誤魔化しているように思われがちですが、本来の賁の意味は、飾りくらますことではなく、あるものの価値をより 効果的にするために粧うことです。

ですから、うわべだけを飾って誤魔化すのは虚飾であり、インチキであり、賁ではないのです。

インチキ・虚飾では亨通を得ることはできません。

しかし飾るというと、そちらの方ばかりに没頭しやすいものです。

例えば、美味しい御馳走を綺麗な器に入れ、一層、美味しく食べるのは賁ですが、器ばかりに気を取られ、非常に凝った器に誇らしげに盛りつけても、中味がマズイ物でしたら、それはもう賁ではなくて虚飾です。

そして、賁というものはどうも、そういう傾向に陥りやすいので、「小しく往く攸あるに利ろし」と戒めているのです。

加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)



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