たくざんかん ほんか
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━━━主爻
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<卦辞>
「咸は亨る。貞に利ろし。女を取るに吉」
<読み方>
かんは とおる。ていによろし。じょをとるに きち。
<説明の要点>
「咸」とは、感ずるという意味ですが、それは心に感ずるばかりでなく、手や足に物の触れたのを感じるような感覚的な感じ方も含め「咸」と言います。
また、「咸」は、「みな」とか「ことごとく」と訓読みするように、目に触れれば目に感じるし、胸に思えば胸に感じる……隅々にまで行き渡っている人間の感性、感覚のことを言っていおります。
また、人間の感性ばかりでなく、水蒸気が冷気に感応して雨となったり、斜陽を色に感じて空が夕映えするような、自然界における感応作用も咸とみなしています。
人間同士の感応を考えてみれば、やはり若い男女の異性に対する精神的、肉体的な感性を挙げなくてはなりません。
それで小男の艮(山)と少女の兌(沢)とを合わせたこの卦に、咸という意味を当てたのです。
「感じる」ということは本能的なことですから、その対象を取捨選択し、良いものだけを感じるわけではありません。
ですから、感じたものの中から受け取って良いものと良くないものとを分別しなくてはならないのです。これを簡潔に言うと「貞に利ろし」 ということになります。
感じる作用を感性とするならば、感じたものを識別するのが知性で、この二つは車の両輪のようなものです。
感ずるときには、正しい知性をも共に働かせ、いつも正しいものを感受するようでなくてはならない。
男女の例でいえば、若い妻が自分の夫だけを待ち、他の男へは少しも心を向けようとしない……それが本当の咸であり、これを推して「咸は女を取る(娶る)に吉」というのが、彖辞の大意です。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)