ふうざんぜん ほんか
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━ ━主爻
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〈卦辞〉
「漸は女婦ぐに吉。貞に利ろし」
〈読み方〉
ぜんは じょ とつぐに きち。ていに よろし。
〈説明の要点〉
これまでも晋を始めとし「進む」ことを内容とした卦は少なくありませんでした。
しかし、この漸は、同じ進むにしても「漸を追って進む」のです。
地風升は昇り進む卦でしたが、それは地中の木の芽が上に成長して行くことを見ましたが、その木が大木に育ち上がったのが、この漸です。
内卦の艮は山で、外卦の巽は高木です。
いわば、見上げる峯の一本松です。
この木は、決していっぺんに大きくなったわけではなく、目に見えないほど少しずつ、しかも休むことなく伸び育って、ついに大木となったのです。
そういった順を踏んで、段々に進んで行くのが漸の進み方です。
同じ木の成長でも、升においては将来のこととして「升り進む」勢いを表したのに、漸では過去のこととして「漸く進み」と、経過を省みた取り方をするとも言えます。
そしてまた、升ではその進み方を人材の登用に当てたのに対し、漸では女が嫁ぐのに当てています。
段階をふんで婚の成る様子を、漸に見ています。
この漸は、もともとは天地否から来ています。
男女の交わりのない天地否の卦の、三爻と四爻が入れ替わったのが、この漸の卦です。
そして「女を取るに吉」とあった咸の卦においては、男を主として女を娶るのを見ましたが、漸にあっては女を主とし、その嫁ぎゆくことを見ています。
それは、巽の長女が門(艮)の外へ出て行く卦だからでしょう。
天地否の、内卦坤の一陰が、進んで外卦に位を得たのは、陰柔としての才能を用いて正しい所を得たわけです。
これは女が嫁ぐことだけに吉なのではなく、漸進する目標を失わず、人がみなそのようであれば、天下を正しくする事が出来ると言っています。
そして嫁いで仕えるべき夫は、剛健中正であり、卦徳で言うならば、内止まって外巽う(したがう)のですから、急速に進むことを求める者のように、すぐに疲れて休でしまうといったこともなく、動いて行き詰ることもないと言い添えています。
おそらく漸の進むことに行き詰らないのに言及したのは、互卦に火水未済があり、その用の尽きることがないのに取象したものでしょう。
(加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)