雷水解(らいすいかい)本卦

独学者のための易経解説
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雷水解 本卦

らいすいかい ほんか



雷水解 本卦の解説

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━━━主爻
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〈卦辞〉
「解は、西南に利ろし。往く攸なければ、其れ來り復りて吉。往く攸あれば、夙くして吉」

〈読み方〉
かいは、せいなんに よろし。いくところ なければ、それきたり かえりて きち。
いくところ あれば、はやくして きち。



〈説明の要点〉

「解」は「とける」ということです。

この解という字は、刀で牛角を割くという意味で「判つ(わかつ)」と同意です。

切り割いて見るのですから、解には「よくわかる」という意味があって、解釈とか理解とかいう熟語ができています。

しかし、この卦名の解は、そこまで推究せず、単に今までは一つであったものを判つという事象から「とく」(解放)、「はなす」(解散)「ゆるむ」(緩懈)というような意味を当てています。

内卦の坎は冬であるのに対し、外卦の震は春であり、雷です。

すなわちこの卦は春にあって寒気の緩み解ける象で、これを解と名づけました。

これを人事に推してみますと、坎の険阻から震の奮動をもって解散されることにもなり、坎の難みを震の出動をもって脱することにもなり、また、天下の坎の邪悪が震の喜びをもって解消するというようなことも卦の象意とすることができます。

従ってこの卦は、険を前にして艮まることを余儀なくされた蹇の状態が解消するのだと考えられます。

しかし険中に止まっているうちに自ずとこの解消の気運が訪れたと解するよりも、いかにして険難を脱出しようとする努力が現れたと見るべきです。

難みが解け憂いに閉ざされたことが和み緩むというのが、この卦の大意です。

これを自然の上に推せば、閉ざす陰の気を破って、雷・雨の鼓動恵澤
をもって草木の発芽出土をなすことであります。

これを天下の上に推せば、民の辛苦を緩め衆を安心させることです。

これを君子の上に見るならば、小人を去らせて禍根を除くことです。

爻象は主に、後者の小人を解き除くことをもって卦を考え、卦象は前二者の意としております。

「解は、西南に利ろし」とあります。

この西南は、蹇の時と同じで坤陰を指し、先立たないことを意味しています。

易きにつくことを教え、孤高を去って衆俗に親しむべきことを表したものです。

解は、難みの離れ散ろうとしているときなので、厳酷な態度で臨み民心を委縮させるような事があってはならない。

易きについて従い服して来るようなやりかたをして初めて解の道に適うのです。

これがすなわち「解は西南に利ろし」であり、治国平天下の解なのです。

天下の蹇と言えば、戦争や飢饉などのために困難に耐えているといった場合ですが、そういった時には農耕地も放っておかれているものなので、平和の兆しが見え出した時には、真っ先に荒廃している土地の復興に力を注ぎ、疲弊した民を鼓舞することが大事です。

「解は西南に利ろし」とある具体的な事象です。

「往く攸」というのは、険難脱出のために救済の施しをするということです。

この卦の外卦は坎の外に難を免れています。

内卦は、坎が未だ消えず、難みの中にあるわけで、すでに難みの解けたところと、まだ解けきらないところがあるとも言えます。すでに難みの解けたものに対しては、その上に更に施しを加える必要はないと戒めたのが「其れ來り復りて吉」のほうです。

戦争や天災などで難んだ後に、それらの者に救いの手を差し伸べてやるのが解の道ですが、もうその必要のない者に施しを加えるのはいけません。

欠乏に耐え、復旧に張りきっているところへ、あまり施しを厚くするとその裕さに泥み、その発奮を失い「解は懈なり」で、怠りのほうの解になってしまいます。

それが甚だしくなれば、そのような災難が再び来る事をひそかに望むようにさえなってしまいます。

これを卑近なところに見るならば、火災保険の弊害などが適例です。

保険の制度そのものは大事なものですが、会社同士の競争により必要以上の保証が契約されるため、いつ焼けても損はないといった気持ちを抱かせる…もっと言えば、保険金目当てに放火する者が現れたりする。これは、難みを解く施しが厚過ぎて、かえって解の道に添わない結果を招きます。

それを戒め「往く攸なければ、其れ來り復りて吉」と言っています。

そのように厚過ぎず、乏し過ぎず、中を保つというのが易の一つの思想です(内卦の中を得ている二爻を主にした見方)そして「往く攸あれば、夙くして吉」とは、救うべきを救うのには急を要することを示しています(これは四爻の震の主爻を指しています)。

加藤大岳述 易学大講座 現代語要訳)



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